吉田たかお演説集

2018年2月議会 民泊関連議案賛成討論

平成30年(2018年)2月23日 京都市会本会議場

※観光立国を目指す政府の方針を踏まえて民泊への規制が緩和され、住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立。そのなかで京都市では違法民泊のトラブルが続出し、住民の不満や不安が表面化しています。私は常任委員会や予算委員会で公明党を代表して議論。両極端に分断するのではなく共生するビジョンが不可欠との視点で、実効力ある提言を積み重ねました。2月市会では異例の集中審査が開かれて民泊条例や予算案を質疑。本会議で会派を代表して賛成討論に立ちました。

【民泊条例の大きな意義】

 公明党京都市会議員団は、議第169号の委員会修正案及び議第170号について賛成するとの態度を表明しておりますので、私は議員団を代表し討論を行ないます。

 民泊は、訪日外国人客いわゆるインバウンドの積極的受け入れや宿泊型観光の振興という時代の要請にこたえるとの大きな意義があることは理解しています。リーズナブルな旅を求める観光客のニーズに合うとも言われています。

 しかしながら、それと同時に地元住民の皆さんが不安を抱き懸念を示されている事実を重視するべきであることは論を待ちません。現実に多くの地域で問題が顕在化しており、一部から「行政が後手に回っている」という批判も出ています。私は、京都市がこうした声を真摯に受け止め、局を超えた体制を整備して積極的に取り組んだことを高く評価するものであります。

 民泊すべてが悪であると言い切るものではありません。地域と共存共栄を重視して調和を図ろうとする事業者の方が多いと思います。民泊の進出に不安を覚えている地域住民との「共生」を推進するためにも、地域に受け入れられない悪質な違法民泊と良心的な民泊とを明確に立て分けるためのルールづくりが必須であります。

 今回の条例案は、民泊を通して京都活性化に資するという大局的な共通理解を基調にして、行政と業者および市民が各々の責務を担うという趣旨を大前提としています。我が会派は、その基本認識に立脚して民泊問題を議論してまいりました。

【迷惑をかけて改善しない事業者には断固たる措置を】

 市長は、「違法民泊を許さない。根絶する」と、様々な場で表明しておられます。全く同感です。悪質な業者に法の網や条例の抜け穴をくぐり抜けさせてはなりません。

 本条例案においても、地元自治会や町内会に緊急連絡先を周知することや、家主不在型の事業者において原則10分以内に来られる場所に現地対応管理者を常駐させる「駆けつけ要件」などを規定していますが、緊急時の対応や苦情への迅速な解決が間違いなく図られるのか、住民の不安はまさにその点にあります。

 苦情に適切に対処せず、騒音や廃棄物などのトラブルを未然に防止する努力をないがしろにする事業者に対しては、断固とした措置が行われるべきであります。

 条例第22条で5万円の過料を課すと規定していますが、それだけでなく、いわゆる民泊新法で苦情等に適切かつ迅速に対応しない事業者に対して、保健所を設置する自治体が「業務改善命令」や「業務停止命令」などの措置を講ずると規定されています。保健福祉局にこれらの措置について見解を質したところ、今後のガイドラインで詳細を定めるとの説明がありました。

 法や条例を実効力あるものとしていくため、現地対応管理者の要件や現場における遵守事項をガイドラインに規定していくべきであると、強く要望するものであります。

 市で規定するガイドラインについては、それ以外にも、何点か重要な点を指摘したいと存じます。1つは、苦情対応については、地域住民からの声に加えて宿泊者から寄せられたご意見やご要望にも真摯に対応するべきであると言う点。しっかり把握し対応を指導する方針を明確にしていただきたい。2つは細街路や袋路での防火防災対策を真剣に取り組み住民の不安に寄り添うべきという点です。

 そして3点目。マンション等の共同住宅においては、入居者と宿泊者が同じ出入り口やエレベーターを使用するためトラブルが発生しやすいと懸念されています。きめ細かなルールを徹底するとともに、状況に応じた柔軟な改善を積み重ねる必要があると申し上げるものです。

【地域住民に寄り添った行政のあり方】

 さて、地域と民泊の調和・融合を推進するためには、橋渡しの役割を担う行政の責任が重大であります。地区計画や建築協定など既存の仕組みを有効活用して、地域の個別事情を踏まえた街づくりの方針を住民が主体的にルール化し、民泊事業者との協定に反映することができるよう、専門家を派遣することも決定しています。ぜひ、周知徹底に努めるとともに、各地域の住民に寄り添って誠実に支援していただきたくようお願いいたします。

 最後に、民泊通報相談窓口の増員と広報周知の拡充については、ポータルサイトなど最新のICT技術を駆使して、具体的なソフト面の充実を図っていただきたい。同時に、民泊仲介サイトが違法民泊の温床とならないように監視機能を充実強化していくことを強く申し入れるものです。

 以上、何点か指摘いたしました。条例施行後が大事です。市民のみならず多くの方々が注目しておられます。市長を先頭に全庁体制で進めていただきたい。そして、地域との調和を大前提として施策を展開し、課題が発生した場合には速やかに対応するとともに、国に対しても現場の声を届けるなど、連携を強化する必要があると考えます。

 条例が市民生活の安心安全と京都活性化に寄与することを心から願い、討論といたします。ご清聴ありがとうございました。

(口先だけの追求や糾弾に走るパフォーマンスではなく、地域に根を張った草の根のネットワークで培った庶民の目線で建設的な提言を積み重ねる決意を込めて演説。大きな反響がありました)