「22世紀の戦争論」 下村健太

2026年4月に朝日新書から発行された本書は、米国のシンクタンクや国連本部に勤務した気鋭の研究者が、「なぜ人類は戦争を繰り返すのか?」という永遠の謎に挑んだ注目の1冊です。
欧州や中東で残酷な戦争が勃発し、国際秩序が揺れ動いている今、「戦後」という時代に終止符が打たれ、新たな「戦前」にならないために、私たちはどうあるべきか。そのヒントを多くの心ある人が模索しています。
著者は、戦争の原因を「人」「社会」「国家」「国際社会」という4層構造で体系的に分析するため、心理学·人類学·政治学·経済学を駆使し、古代から現代までの知見を統合して「なぜ戦争はなくならないのか」を解明しようとしています。
「第1章 人間の本性」は、サブタイトルに「愚かな人間の心理とは何だろうか」を掲げ、暴力に彩られた人類史を俯瞰しつつ、人間の不信と恐怖と憎悪が戦争に駆り立てるメカニズムを科学的に解明していきます。
「第2章 社会の現在」では社会的アイデンティティの深奥を追い、「第3章 国家の宿命」は政治と経済が制度化された源流を探ります。そして「第4章 国際社会の蹉跌」では悲惨な世界戦争の本質を抉っています。
ページをめくる手が止まらないくらいに圧倒されるのですが、何よりも凄いのが、アインシュタインやフロイト、カント、デカルト、カーライルなどの識者や、チャーチル、ヒトラー、スターリン、毛沢東などの国家指導者たちの発言や見識が、毎ページのように登場するのです。
歴史と科学が融合する壮大なスケールに、ドキドキわくわく、知的興奮が身体中を駆け巡り、読書の醍醐味を堪能することができます。私は、国籍や時代を超えた偉人たちの言葉を駆使して検証する「人類が戦争を繰り返す原因」に大いに説得されました。
同時に、終章で語られた言葉に勇気づけられました。それは「戦争の根本的原因を完全に排除することは難しいが、私たち一人ひとりが果たせる役割は決して小さくない。過去の戦争を歴史は変えられないが、私たちが選択を重ねる先にある未来には、まだ無数の可能性が眠っている」という一節です。
なんという真摯な言葉でしょう。「戦争と平和」に向き合う真剣さに感動するのは私1人ではないと確信します。
私自身は、「人→社会→国家→国際社会」と移動した視点は、もう1度回りまわって「人」に循環すると考えます。つまり、戦争をしない未来を構築するのは、1人1人の「人」が自身の持って生まれた使命を自覚して、そのために文字通り生命を削って挑戦し続ける中に、可能性が拓かれていくと言いたいのです。
私の人生の師匠である公明党創立者の言葉を紹介して本稿を終わります。
「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」




