私の大好きな本の数々をつれづれに紹介します。

「隠蔽捜査シリーズ」 今野敏

2012年6月24日

この「おすすめ読書」ページの更新が滞り、ご心配をおかけしています。心よりお詫び申し上げます。お詫びのしるしと言えば何ですが、この半年間で何度も読み返している小説を紹介させていただきます。(えっ、前回も同じ前置きやったんじゃ・・・・・・以下略)

横山秀夫の登場以降、百花繚乱の感がある警察小説の中で、最も脂が乗り切っている書き手と言えば今野敏。代表作はTVドラマ「ハンチョウ」の原作である「安積班」シリーズですが、「ハンチョウ」の主演俳優・佐々木蔵之介の実家は、洛中に唯一残っている造り酒屋であることは有名ですよね。実はその酒蔵は吉田たかお事務所の東隣にあるんですよ。――「それがどうした?」と言う声なき声が聞こえてきたので、先に進みます。

今野敏のブレイクのきっかけとなったのがこの「隠蔽捜査」シリーズ。これがまた面白いのなんの。ミステリーは、初読の時はスリル満点でワクワクしながら読み進めるものの、結末がわかったら再読する気持ちが薄れるのが普通ですが、何度読んでも面白いのです。まさにおすすめ!

「事件は会議室でおこっているのではない。現場で起こっているんだ!」という決め台詞に代表されるように、刑事ドラマや小説では必ずと言っていいほど警察庁のキャリア官僚が敵役を務めます。こうした、ある意味かわいそうな立場であるキャリア官僚が、今作の主人公・竜崎伸也です。ねっ、異色でしょ?

しかも、ユニークなのは彼の人物造形。原理原則を重んじ、建て前と本音を使い分けることを一切しない頑なさに、家族もあきれ果てている始末。部下も家族もたまったものではないと思わせるようなエリートが小説の主人公になるなんて、この作品が登場するまで誰1人考えもしなかったことでしょう。

そんな竜崎が、巨大組織を揺るがす大事件を次々と解決していくのです。しかも、ありそうにない設定にも関わらず、いかにもありそうな場面がいきいきと展開されるという、小説の常識を覆すようなリアリティーに満ちていて、何度読んでも飽きないのですから、アラ不思議。

登場人物も、警視庁刑事部長や方面本部長、公安や麻薬管理官から所轄の刑事に至るまで多種多彩。エリートの妻らしからぬ奥さんや子どもたちの生活描写も重要な役割を果たしています。美人キャリアや寡黙な副署長など、みな個性にあふれ、台詞回しも魅力に満ちています。

シリーズは、第2作以降は「果断」「疑心」「転迷」というサブタイトルが付き、キャリアにもかかわらず所轄の警察署長という立場で活躍する竜崎が、息をもつかせぬ緊迫した事件を鮮やかに解決に導いていきます。内容は言えませんが、面白いこと請け合いです。だまされたと思って読んでみて下さいな!

それはさておき、ヘンな話ですが、私はこの小説を読んで、「なんでもかんでも官僚はケシカラン!」というマスコミ等のバッシングに影響されていた先入観を改めました。休みを返上して国家国民の為に貢献しようと奮闘する多くの公務員たちが、国民の大多数から正当に評価されないという矛盾を直視するようになったのです。

一部のワイドショーは、官庁や地方自治体に突撃取材し、問題点を拡大解釈してオドロオドロしく糾弾したりしていますよね。中には実際にケシカラン実態も多いと思いますが、大多数の公務員は本当にまじめで、各々の役割を果たすべく献身的に働いています。実際に市役所では、夜の10時を過ぎても不夜城のように灯りがともっています。(5時30分以降はエアコンが停止するにもかかわらず、市民の為に頑張っておられるのです)

そう言えば、議員もそれは同じ。年4回しか開催されない議会でも居眠りしたり無駄話ばかりして、TV放映されるときは原稿を読んでいるだけ――。「どうなってんにゃ!」と不信を持たれてしまっているのではないでしょうか。

確かに、ケシカラン議員はいますが、皆がそうではありません。市民のご期待にお応えするため、睡眠時間を削って頑張っている議員も存在することを知っていただけたら幸せです。少なくとも私自身は、市民のご批判に襟を正し、時間の合間を縫って研さんや現地調査を重ねて、京都の未来を切り開く政策を創りあげていこうと決意しています。

2年前に京都市自転車安心安全条例の制定を目指して、文字通り不眠不休で頑張った時も、市会事務局の政務調査課の方々や各局の担当者の皆さんが、優秀な頭脳をフル回転して支えていただきました。単に仕事を依頼するだけでなく、様々な調査や研究を共にしつつ、貴重な意見交換もできるなど、大いに学ぶことができたことを忘れることはできません。

これからも、「政治主導」を勘違いすることなく、誠実に謙虚に研鑽を重ねて、京都市活性化のお役に立って行こうと思っています。